α-SGR(Rukubat)によるガイドシステム
1.α-SGR(Rukbat)の特徴
2.α-SGR による自動ガイド
3.α-SGR によるディザガイド 2015/06/23
4.撓みによるガイドずれの補正
①.撓みのモデル
②.撓みのモデルの検証
③.α-SGRを使用したガイドずれ補正
①メトカーフガイドができる。この機能を応用すると撓みによるガイドずれを補正することができる。
②ディザガイド撮影ができる。③蓄積型高感度カメラ MTV-73SHN-BS を使用してガイドマウントなしでガイド星を選べる。現在はカメラをQHY5L-Ⅱに変更した。
④このガイドシステムにはパソコンが必要である。
①ε250-Cを60mmガイド鏡でガイドする(赤道儀はJP タカハシ)
ガイド鏡はFC60NZ(タカハシ)を使用し焦点距離は500mmである。k-Astec の鏡筒バンドを使いプレートにガイドマウントを使用せずに直付けである。ガイド用カメラ:MTV-73S85HN-BSの蓄積時間を1067mSec(64×)で使用したとき約8等星までガイド可能である。ほぼガイド星がみつかるがイメージシフトを使用してガイド星を探すこともある時々ある。現在はガイド用カメラをQHY5L-Ⅱに変更した。ε250-C+冷却CCDカメラ:STL-11000Mでの撮影ではセルフガイドによってガイドするのでこのガイドシステムは使用することはなくなった。しかし、彗星の撮影ではε250-C+デジタル一眼を使うときにはこのシステムは威力を発揮する。
②PROMINAR 350mm F4を50mm f=200mmガイド鏡でガイドする(赤道儀はEM-100 タカハシ)
ガイド鏡は小型軽量の口径50mmのファインダーにガイド用カメラ:QHY5L-Ⅱを取り付けたものでPROMINAR 500mm F5.6 FL(TX-07:350mm F4)+EOS6D(SEO-SP4)をガイドする。赤道儀はEM-100(タカハシ)である。EM-100は小型であるがガイド精度の良い赤道儀である。EM-100はE-ZEUSⅡ改造を行い自動導入化した。
・明るい星に向けてバーティノフマスクでピント合わせをする。
↓
・撮影天体を自動導入
↓
・ディザガイドの機能を活用して撮影
↓
・撮影終了後明るい星に向けてピントチェック
↓
・撮影天体を自動導入
↓
・ディザガイドの機能を活用して撮影
これを繰り返すためには自動導入は必須である
Canon EOSでの撮影制御をα-SGRで行うと1コマ目の撮影が終了するとガイド星を自動的に数ピクセルずれる。ずれた位置でガイドが始まるとセットした次のシャッターが開くまでの遅延時間(任意の時間)が経過後自動的に撮影が開始される。遅延時間は30秒としたがもう少し短くてもよい。したがって、ガイド星をセットして自動ガイドが始まったら、EOSの露出時間と撮影枚数をセットしておけば最後まで撮影者は何もしなくてもディザガイドをしてくれる。これは非常に便利である。Ver3よりこの機能が追加されたがマニュアルにはほとんど説明もなく問い合わせてこの機能の存在を知った。テスト撮影では問題なく動作した。ピントは少し甘いがバックグランドのノイズが改善されたのがわかる。
PROMINAR 500mm +TX07 f=350mm F4.0 EOS6D ISO1600 露出 30sec 9コマコンポジット
赤道儀:EM100 ガイド鏡:50mmファインダー
撓みによるガイドずれは銀塩では問題にならなかったがデジタルでは解像力があがりこの影響が無視できなくなった。ε250C での撮影ではガイドずれがわずかに発生し色々な補強を行っても解決できずにいた。もしかしたらカーボン鏡筒の撓みかもしれない。この解決策として、オフアキシスガイダーも考えられるが、フランジバックが短く市販のものは使用できない。オフアキシスガイダーの自作を考え、図面まで引いたがF3.4と35mmフルサイズCMOSの組み合わせではガイド星を導くプリズムによるケラレが無視できるものではないことがわかり断念した。デジタルで撮影した過去の画像を調べると星のずれの量と撓みのモデル計算値にかなり良い相関が見られることがわかった。ただしε250C側の撓みであるかガイド鏡側の撓みなのか区別はつかない。そこで、撓みのモデルよりガイドずれの量を予測し、α-SGR のメトカーフガイドの機能を使用し、ずれを補正しながら撮影する方法を考えた。
①.撓みのモデル
撓みの量は鏡筒を水平に向けたときが最大であるとする。鏡筒が水平方向に向いているとき、すなわち天頂距離 Z=90°のとき、撓みによるずれΔZが K″であるとする。一方、天頂距離 Z=0°のとき撓みによるずれΔZは0″であると考えられる。撓みΔZは重力によるものであるので、重力の鏡筒に垂直方向の分力と撓みΔZが比例するものと考える。すなわちΔZはsin(Z)に比例すると考える。
ΔZ=K″sin(Z) (1)
天球上の赤経α0・赤緯δ0の星を時角 h、観測地の緯度をφで撮影したとする。撓みによってずれた位置α、δは
α= α0- K cosφ sin h / cosδ (2)
δ= δ0+ K sinφcosδ-cosφsinδcos h (3)
天の赤道上の星を撮影するときは、(2)、(3)にδ=0°を代入すると、δの時間的な変化はなくなり赤経方向のずれだけで赤緯方向にはずれなくなる。
北極や南極で撮影したときは、(2)、(3)にφ=90°を代入すれば、αとδは時間的な変化がなくなり撓みによるガイドエラーはなくなる。日周運動は水平方向に動くためである。
②.撓みのモデルの検証
露出開始時刻のときの星の時角 をh1として、星の位置α1・δ1を(2)(3)より計算する。次に同様に露出終了時刻(時角:h2)の星の位置α2・δ2、を計算して天体画像と重ねた画像を下に示す。露出開始時刻の位置を赤丸、露出終了時刻の位置を緑丸で示してある。天体の画像はデジタルカメラでコンポジット用に撮影した複数画像をPhotoShopの比較明でコンポジットしたものである(図は全て上が北でピクセル等倍)。完全ではないもののずれの傾向がモデルとほぼ一致する。
補正なし
③.α-SGRを使用したガイドずれ補正よ
モデルよりガイドずれを予測しα-SGR でメトカーフガイドをした画像。完全ではないがガイドずれがほぼ解消された。残差を解析すればさらに精度が上がる?
④.α-SGRのメトカーフガイドの設定
撮影直前に、SuperStarⅣの天体のクリック位置を外部に出力して下の自作ソフト「Guide Error」で読み取る。そしてα-SGRのメトカーフガイドの設定値を計算する。ガイドずれの修正量はごくわずかである。